研究概要

代表者氏名山下 亜紀子(やました あきこ)
代表者所属機関宮崎大学教育文化学部
役職・課程准教授
助成年度2012年度

研究テーマ

発達障害児の家族の生活支援ニーズに関する学際的研究―ニーズを探索的に析出する試み―

研究概要

 本研究は,発達障害児の母親が有している生活支援ニーズを生み出す生活困難について,探索的に明らかにする目的で実施した。分析・考察は,社会学と精神医学の2領域による学際的見地に基づき,定性的手法により行った。
 分析対象は,本研究の調査に参加した発達障害児の母親22名の発言のテキストデータである。分析方法は,質的データ分析法を採用し,録音データの逐語録化,逐語録化したテキストデータから困難さの語りの抽出(セグメント化),定性的コードの割り当て(オープンコーディング),より抽象度の高い焦点的コードへの置き換え(焦点的コーディング),概念的カテゴリーの生成,概念モデル化,という手順により生活困難についての分析を行った。
 分析の結果,母親の生活上の問題として,<障害児の言動による生活の混乱>,<子育てモデルがなく,試行錯誤している状況>,<支援環境との物理的・心理的距離感>,<良好ではない周囲との関係性>,<日常的に生じる心理的負担感や葛藤>の5つの概念的カテゴリーを生成した。
 またこれら生活困難相互の関連性を検討した結果,母親自身の生活困難への対応がなされず継続する問題,養育上の困難さへの対応において支援が得られないという2つの問題から母親の心理的負担感や葛藤が生み出されるプロセスが明らかとなった。