研究概要

代表者氏名任貞美(イム ジョンミ)
代表者所属機関同志社大学大学院社会学研究科
役職・課程博士後期課程
助成年度2013年度

研究テーマ

介護職員の虐待認識に基づいた「実践上の高齢者虐待定義の再構築」に関する研究

研究概要

 本研究の目的は、日本における高齢者虐待の定義の内容とその特徴を体系的に調べるとともに高齢者虐待に関する事例を用いて介護職員が認識している虐待の定義について検討することである。
 研究の結果は次のようである。第1に、高齢者虐待の定義は抽象的であり、かつ研究者ごとに多様な定義と用語を使用している。とりわけ虐待防止法が定まった以降にも研究者ごとに異なる定義と分類を使用していた。第2に、不適切なケアや人権侵害行為等を高齢者虐待として捉えようとする動きが現れ、虐待定義の内容と範囲が拡張されている。第3に、既存の定義は虐待の被害者になる高齢者の立場や視点を反映せず、研究者によって構成された理論的定義を用いている。第4に、虐待防止法はもとより既存の先行研究すら、虐待定義に施設内虐待の特徴と環境を反映していない。
 一方、新聞を用いて高齢者虐待の事例を分析した結果、“身体的虐待”“性的虐待”“心理的虐待”“経済的虐待”“ネグレクト”“準虐待”“不適切なケア”という7つのカテゴリーが抽出された。
 このような研究結果をもとに、高齢者虐待の予防という観点から高齢者に最善の利益を与えられる社会福祉的視点に基づいた高齢者虐待の定義の再構築を行うことが必要であると提言できる。