研究概要

代表者氏名河村 美穂(かわむら みほ)
代表者所属機関埼玉大学
役職・課程教授
助成年度2015年度

研究テーマ

食でつながるコミュニティーの研究

研究概要

 子どもたちの貧困の状況が問題になって久しい中で、生活困窮者自立支援法の制定および生活保護法一部改正により地方自治体が予算を組んで生活保護世帯への学習支援に取り組むようになった。それらは一定の効果がみられるが、貧困の状況は多様であり毎日の生活が十分に保障されていないという児童生徒もいる。本研究は、これらの子どもたちへの支援として現在注目されている「子ども食堂」等の活動を対象として、単に食事を提供する場としてではなく、食で大人も子どもも集いつながるコミュニティーとしてとらえ、そこで起きていることを詳細に記述し、集う人々の変容を明らかにすることを試みた。研究対象は関東、関西あわせて7つの事例である。なかでも参加者へのインタビューを含めて詳細に事例の分析ができた4例については、共通点として(1)地域に関わってきた人々の子どもたちへの思いが基盤である。(2)活動に関わる若い世代が運営に関わる実務を担っている。(3)様々な団体や学校等とのネットワークがある。(4)活動の内容を限定せず、必要に応じて様々な取り組みを行う。(5)食事をつくること、一緒に食べることで親密な関係を結んでいる。を挙げることができた。それぞれの事例については、既存の福祉教育理論の他にエンゲストロームの学習の拡張理論、ノットワーキング理論、ギリガンの「もう一つの声」における理論等を用いて解釈が可能となった。