研究概要

代表者氏名髙橋 智(たかはし さとる)
代表者所属機関東京学芸大学教育学部総合教育科学系
役職・課程教授
助成年度2015年度

研究テーマ

発達障害等を有する非行少年の立ち直り支援と地域移行支援に関する調査研究

研究概要

 本研究では、全国の保護観察所職員・更生保護施設職員・自立準備ホーム職員・保護司への調査を通して、発達障害等の発達困難を有する非行少年が社会的自立・地域移行をするうえで抱える困難・ニーズの実態を明らかにし、社会的自立・地域移行、再非行防止に向けた課題を検討した。本調査は、保護観察所職員・更生保護施設職員・自立準備ホーム職員・保護司を対象とした訪問面接法調査を実施した。調査期間は2016年7月~2017年1月。調査は全43回実施され、延べ70名(内訳:保護観察官31名、保護司19名、更生保護施設10名、自立準備ホーム9名、その他1名)から回答を得た。保護観察官および保護司からの回答では、保護観察官と保護司が連携を図りながら丁寧に少年に関わるなかで、少年との関係を築いていることが回答された。とくに保護司との関わりにおいては、地域で共に生活する「祖父母的、父母的」役割が少年にとって重要な役割を有していることが明らかとなった。本人が「困っている」タイミングで適切に介入をすることが重要であり、困難・課題をプラスの特性へとどう反転させていくかがポイントである。保護司のように、本人だけに「責め」を求めない「善なる」大人との出会いのなかで少年たちは大きく成長発達していく。今回挙げられた事例は必ずしも20代までではなく、一部30代以降の状況も回答されている。それらの回答をふまえると、いかに20代までの早期の介入・支援が重要であるかをあらためて確認することができた。このことは法務省の矯正教育・保護観察だけの問題ではなく、学校教育(文部科学省)や福祉(厚生労働省)との連携・対応が当面する課題といえる。