研究概要

代表者氏名清水 奈都紀(しみず なつき)
代表者所属機関大谷大学真宗総合研究所
役職・課程協同研究員
助成年度2015年度

研究テーマ

地域コミュニティの活性化を図る地域参加型の文化遺産保存活用システムに関する研究

研究概要

 本研究では、モンゴル国ウブルハンガイ県ハラホリン郡で地域コミュニティを活性化させる地域参加型の文化遺産保存活用を実現するうえで必要となる手法やプロセスを明らかにし、体系的に整理して他所での応用へと繋げることを目指した。 
 ハラホリン郡は世界文化遺産「オルホン渓谷の文化的景観」に含まれる。この地域では住民の文化遺産保存活用への参加機会が乏しいことが一因となって住民による文化遺産の破壊が生じている一方、その背景には住民独自の認識が存在することが明らかになった。そのため、文化遺産に対する住民の認識や知識を発見し発信することで、住民に保存活用への参加機会を創出する必要性を認識した。
 そこで本研究では、文化遺産に対する住民独自の認識や知識を「住民の知」として調査により発見し、博物館での展示解説により発信するという方法で、地域参加が促進され地域コミュニティの活性化が実現できるかを実践的に考察した。
 その結果、地元関係機関および研究者と協働しながら、住民自身がテーマを選択、調査して「住民の知」を発見し、発信するという地域を主体とした方法を用いることによって、文化遺産に対する住民の意識が向上し、保存活用への積極的な参加が促進された。また、住民と地元関係機関の協働関係が構築されて、地域主体による文化遺産の保存活用が実現され継続されることとなった。
 上記の結果から、本研究で用いた「住民の知」の発見と発信という方法による地域参加型の文化遺産保存活用においては、住民自身が調査に主体的に参加して「住民の知」を発見すること、そして住民、地元の文化遺産関係機関、研究者という3者の役割と主体を意識し、有機的な関係性を常に構築していくことが重要であることを指摘した。他所への応用についてはハラホリンの隣郡であり、同じく世界遺産に含まれるホジルト郡から開始することが現実的かつ効果的であると判断した。