研究概要

代表者氏名森脇 睦子(もりわき むつこ)
代表者所属機関東京医科歯科大学医学部附属病院 クオリティ・マネジメント・センター
役職・課程副センター長・特任講師
助成年度2016年度

研究テーマ

大病院を時間外受診する軽症患者の推計とその受診要因に関する研究

研究概要

目的:軽症患者による時間外の救急外来受診(コンビニ受診)は,救急医療提供体制において様々な問題が生じている。筆者らは,先行研究において夜間・休日・時間外に外来受診する軽症患者を判定するモデル(以下,時間外軽症患者検出モデル)を開発した。そのモデルは,投薬,注射,処方の範囲での治療の有無,医療費,土日祝日直前の平日の有無で軽症患者を予測するものである。本研究では,そのモデルの信頼性を確認し,全国急性期病院(DPC病院)を対象に軽症患者割合の推計を行った。更に,軽症患者割合に影響する要因を検討した。

方法:国立病院機構法人に属する200床以上の74施設に,2013年4月から2018年3月に夜間・休日・時間外に受診した患者の外来レセプトデータを使用し,各年度の疾患構成の年度変化を明らかにし,モデルの信頼性の検証を行った。次に,1日平均入院患者数が200件以上の652施設を対象に2012年4月~2015年3月に夜間・休日・時間外受診した患者の外来レセプトデータ(14,920,960件)を用いて時間外軽症患者検出モデルにより軽症患者割合を推計した。更に,多変量解析を実施し、推計値に影響する要因を明らかにした。

結果:2013年度~2015年度の各年度の疾患構成は同等であった。DPC病院における時間外軽症患者割合は,2012年度で43.1%に対し2015年度では39.5%に減少していた。これには,年度,病床規模区分,特定機能病院の別が減少方向に影響していた。また,関東に対して,東北,中国地方は増加の方向に影響していた。

結論:先行研究で開発したモデルは作成年度に依存したものではなく,汎用可能と考えた。対象とした急性期病院では年々夜間・休日・時間外受診患者割合は減少していたが4割が軽症であると推計された。また,軽症患者割合には年度,地域,病床規模が影響していた。600床以上と比較して,400-499床,500-599床の医療機関のほうが軽症患者を抑制できていることが明らかになった。モデルの精度など限界があるが,1つの方法により,時間外受診患者の軽症割合およびその影響要因を明らかにできたことは有用である。

キーワード: コンビニ受診,軽症患者,夜間・休日・時間外受診,患者推計