研究概要

代表者氏名色本 涼(しきもと りょう)
代表者所属機関慶應義塾大学医学部
百寿総合研究センター
役職・課程講師
助成年度2021年度

研究テーマ

超高齢者のウェルビーイングに資する心理社会的および生物学的要因の検討

研究概要

一般成人においてウェルビーイングと、身体機能、ADL、社会参加との関連が報告されているが、超高齢期におけるウェルビーイングの要因は十分に知られていない。本研究では、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターと川崎市とで行っている「川崎市における高齢者の暮らし方と健康に関する学術調査」の追跡調査に参加した超高齢者を対象として、身体的特性、神経心理特性、社会参加の領域から評価を行い、ウェルビーイングの要因を調査した。PGCモラールスケール得点は、身体的因子のうち、補聴器使用(相関係数 r=-0.362)、視力障害(r=-0.296)、安定剤の使用(r=-0.326)と、心理的因子のうち、ACE-III言語機能(r=0.443)、GDS(r=-0.600)、老年的超越の下位分類のうち、宇宙的意識の獲得(r=0.351)、自己の一貫性(r=0.522)、孤高の感覚(r=-0.417)と、社会的因子のうち、近所付き合いの人数(r=0.466)、近所付き合いの頻度(r=0.582)、サークルや会への参加頻度(r=0.438)、主観的な孤立の感覚(r=-0.482)、経済的負担感(r=-0.393)と有意に相関した。本研究において、超高齢期のウェルビーイングは、身体的因子、心理的因子、社会的因子と関連し、特に、言語機能、うつ症状、老年的超越特性のうち自己の一貫性に関した認識、社会参加や孤立感と強く相関することが示された。これら特定の認知機能領域や老年的超越、社会関係とウェルビーイングとの関連について、今後、サンプル数を増やした解析および縦断的評価や脳画像評価を含めたさらなる研究が必要である。