研究概要

代表者氏名亀田 優衣(かめだ ゆい)
代表者所属機関社会医療法人社団 正志会
花と森の東京病院
役職・課程ホスピタルカウンセラー
助成年度2021年度

研究テーマ

COVID-19の罹患による病院職員の精神状態の変化に関する研究
―陽性患者受け入れ病院で働く職員が罹患したとき, どのようにサポートするか―

研究概要

 新型コロナウイルス感染症(以下, COVID-19)は2020年パンデミックを引き起こした疾患であり, 病院の医療従事者や事務職員(以下, 病院職員)は未知の疾患であった当初から感染リスクに晒されながら勤務していた。感染した病院職員に対する支援はまだ知見が極めて少なく, 更に具体的に検討することが必要と考えられた。そこで本研究はCOVID-19に罹患した病院職員が職場復帰までの間周囲との関わりの中で体験する精神的変化やそのプロセスにおいて不調予防に役立った要因を明らかにすることを目的に, 陽性患者を受け入れる都内2病院に勤務し, 感染した職員29名に対してインタビューを行った。質的分析の結果, 職員は陽性となってから職場に復帰するまでの間, 生活の心配, 感染を広げる不安, 周囲への罪悪感, 自身の症状への不安といった負の感情に苦しみ続けること, 周囲からの情緒的/道具的/情報的サポートによって生まれた正の感情がその苦痛を緩和すること, 自身の体験を病院職員として活かし, 原動力に変える中で働き続けることが見出された。感染した病院職員は絶えず負の感情と正の感情の間で揺れ動き不安定であることが推察されると共に, その心理的苦痛を和らげた声かけ等, 必要なサポートが具体的に示された。限界もあるが, 本知見は今後も未知の感染症に罹った病院職員の心理状態を守る上で必要なサポート, 心理的苦痛の要因についての貴重な示唆を含むと思われる。