研究概要

代表者氏名井上 建(いのうえ たけし)
代表者所属機関獨協医科大学埼玉医療センター
子どものこころ診療センター
役職・課程講師
助成年度2021年度

研究テーマ

リモート・グループで実施する「チックのための包括的行動的介入」の効果の検討:ランダム化比較試験

研究概要

 チック症のための包括的行動的介入(CBIT)は複数の心理療法をパッケージとした心理療法プログラムであり、各国のガイドラインで第一選択の治療となっている。しかし、セラピストの不足、費用、移動・時間的制約などのために治療を必要とする子どもたちに行き届いていない。このような背景から私たちはリモートおよびグループで実施するCBIT(RG-CBIT)を開発した。本研究ではランダム化比較試験を実施しRG-CBITの有効性を検討することを目的とした。対象は、7歳から17歳のチック症の患者。8名のリクルートがあった時点で、介入群と非介入群に割り付けた。主要評価項目はYGTSSとCGI-Iとし、介入/待機前・介入/待機直後・介入/待機1か月後の計3回実施した。2023年3月20日現在、28名がリクルートされており、計3回の評価を終えた介入群8名(平均年齢12.2歳)および非介入群7名(12.0歳、1名脱落)について統計解析した。RG-CBITに参加した被験者は欠席・脱落することなくすべてのセッションに参加した。介入群のYGTSSは、介入前後で平均-6.13であったのに対して、非介入群は+0.29であった(p=0.0053)。さらに1か月後は、介入群はー5.75であったのに対して、非介入群はー0.29であった(p=0.012)。介入群と非介入群のCGI-Iはそれぞれ平均2.63と4.14であり、介入群が有意に低値を示した。以上からRG-CBITはチック症の症状改善に有益であると考えられた。