研究概要

代表者氏名才門 宏平(さいもん こうへい)
代表者所属機関四天王寺大学大学院
人文社会学研究科
役職・課程博士後期課程
助成年度2021年度

研究テーマ

刑事司法手続きの当事者になったろう・難聴者に対する福祉的支援の現状と課題
-地域生活定着支援センターと聴覚障害者情報提供施設へのインタビュー調査から-

研究概要

 本研究では、地域生活定着支援センター及び聴覚障害者情報提供施設へ刑事司法手続の当事者になった「ろう・難聴者」の支援における課題について、インタビュー調査を実施した。そして「ろう者」11事例、「難聴者」4事例を聞き取り、①「当事者の個人的背景」②「支援における課題」の2つに整理して分析した。
 ①「当事者の個人的背景」について、「幼少年期の会話手段」で、ろう者ケースのうち4事例については不明であるが、7事例について家族等は全て手話を使わない聴者であるため、幼少期は自然に言語を習得できる環境にないことが明らかになった。
 ②「支援における課題」について、7つのカテゴリーⅠ【意思疎通への取組の不十分さ】Ⅱ【ろう・難聴者に合わせた対応のなさ】Ⅲ【学び直す機会のなさ】Ⅳ【ろう・難聴者に対する理解の困難さ】Ⅴ【支援ネットワークの弱さ】Ⅵ【聴覚障害ソーシャルワークの未熟さ】Ⅶ【手話通訳制度と運用の不十分さ】が生成された。そして、課題に対して求められる取組として、①刑事施設における手話通訳者等の配置 ②刑事施設における、ろう・難聴者に対する合理的配慮の実施状況についての調査 ③ろう・難聴者に対応した更生プログラムの実施 ④司法・福祉専門職のろう・難聴者への理解のための研修⑤定着支援センターと情報提供施設及び地域の聴覚障害ソーシャルワーカーとの連携⑥聴覚障害ソーシャルワーカーの活用と育成⑦支援における手話通訳派遣等、意思疎通支援の公的保障などが必要であることを提案する。