研究概要

代表者氏名道中 将浩(みちなか まさひろ)
代表者所属機関北海道大学大学院保健科学院
役職・課程修士課程
助成年度2021年度

研究テーマ

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大下における生活困窮者の精神的健康とその支援方法の検討

研究概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、人々の身体的健康のみならず精神的健康にも悪影響を与えている。特に、ホームレス経験者(PEH)のような社会的にも身体的にも脆弱な生活困窮者は、COVID-19への恐怖心増大や精神的健康への影響を受けやすいと考えられる。そこで本研究では、COVID-19パンデミック禍における抑うつ症状、不安症状の実態と関連因子を調査し、パンデミックがPEHの精神的健康に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2022年4月〜6月にかけて日本のPEH 229名を対象に、横断的調査を実施した。調査項目には、人口統計学的特性、衛生習慣に関する質問、抑うつ症状(PHQ-9)、不安症状(GAD-7)、COVID-19への恐怖(FCV-19s)、飲酒習慣、COVID-19感染歴、COVID-19感染リスク認知についての質問が含まれた。本対象者のうち、38.6%が大うつ病障害(PHQ-9≥10)、19.0%が全般性不安障害(GAD≥10)、28.5%がCOVID-19への高い恐怖(FCV-19s≥19)のリスクがあった。また、若年層(18-34歳)、無職、高い感染リスク認知、高いCOVID-19への恐怖心が、抑うつ症状、不安症状と有意な関連がみられた(p<0.05)。これらの結果は、パンデミックが本対象者に及ぼした精神的影響は予想に反して小さいことを示唆している。一方で、パンデミックにより仕事を失ったPEHや若者のPEHが精神的健康の悪影響を受けやすいと考えられた。現行のホームレス支援や研究は高齢者が大半を占める路上生活者に限定されているが、本調査の結果から、精神的健康の観点において若年層や広義の意味でのホームレスにより焦点を当てる必要性が示唆された。