研究概要

代表者氏名中島 かんな(なかしま かんな)
代表者所属機関帝京大学大学院 公衆衛生学研究科
役職・課程研究員
助成年度2021年度

研究テーマ

孤立を経験した保護者と、子どもと保護者支援に従事する支援員への質的研究
-孤立の要因とあらたな支援の在り方-

研究概要

 社会的孤立は、いまや世代をまたぐ社会課題である。なかでも保護者の孤立は、児童虐待や子どもの自殺に直結する。日本では、豊富な子育て支援政策があるにもかかわらず、これらの問題は増加傾向にある。虐待を受けた子どもは、成人して孤立しやすい傾向があり、虐待と孤立は連鎖する。現在の保護者への孤立対策は、未来の社会的孤立を予防できる可能性がある。
 本研究では、基本的な子育て支援の在り方を再考し、誰一人取り残さない子育て支援や、その方法の確立の一助となることを目的とした。
 問題は認知されているものの未だ実態把握がされていない保護者の孤立について、支援者(5名)と当事者(6名)にインタビュー調査を実施し、孤立の要因と構造、効果的な支援の実態について、質的研究の手法を用いて分析した。
 その結果、孤立の構造と効果的な孤立対策支援が明らかになった。
 孤立した保護者は、自己決定の経験に乏しく、閉鎖された過酷な状況を経験しており、相談などの援助要請行動ができない状態にあった。また保護者が援助要請をしても、支援者のネガティブ・サポートがさらなる孤立を生み出していると考えられた。
 両者の語りから、安心して失敗できる環境を作り、自己決定を助け、対等な関係で共に考える複合型伴走型支援の必要性が示された。
 この伴走型支援を循環し発展させ、これまで救えなかった保護者が、適切な支援に繋がり孤立の連鎖を断ち切り、未来の孤立を防ぐことが期待される。