研究概要

代表者氏名岩﨑 敬子(いわさき けいこ)
代表者所属機関株式会社ニッセイ基礎研究所
役職・課程准主任研究員
助成年度2021年度

研究テーマ

災害フェーズごとのソーシャル・キャピタルのこころの健康への影響
―避難から11年を経て帰還を開始する福島県双葉町の継続的な定量調査をもとに―

研究概要

双葉町民は福島原発事故後全国に避難を余儀なくされ、2022年8月に事故から11年を経て帰還を開始した。本研究では、2022年10月からアンケート調査を行い、双葉町民のソーシャル・キャピタル(SC)とこころの健康状態を捉えた。そしてこれまで2013年から継続的に行ってきたアンケート調査と合わせて分析し、災害後のSCとこころの健康の関係の長期的な変化を捉えた。主な研究結果は以下の6点である。
① 双葉町民のこころの健康状態は他の被災地と比較しても深刻な状態の可能性がある。震災から11年以上が経ち、長期的には改善する傾向が見られてきたものの、2020年から2022年の間の改善傾向は見られず、回復にはより長い時間がかかる可能性がある。
② 中でも仮設住宅に長期在住の方のこころの健康状態が深刻である傾向がみられ、さらに仮設住宅在住の方が少なくなった現在も、みなし仮設住宅や復興公営住宅の住民の方のこころの健康状態は深刻な可能性があり、継続的なサポートが重要と考えられる。
③ 震災で弱まったSCの回復には、今後も長い時間がかかる可能性がある。
④ 双葉町のつながりを持つことが、周りの人への信頼感を保つことを通して、こころの健康状態を良好に保つ助けになる可能性があり、この傾向は震災直後のみでなく現在も見られる。
⑤ 避難先の地域の住民との関係構築は、現在も重要な課題であると考えられる。
⑥ 双葉町出身の隣人が多くいる人は、避難先の地域の住民との交流機会がある傾向がある。