研究概要

代表者氏名澤岡 友輝(さわおか ゆうき)
代表者所属機関立命館大学
大学院先端総合学術研究科
役職・課程一貫制博士課程
助成年度2021年度

研究テーマ

高次脳機能障害者の就労をめぐる自己開示

研究概要

 本研究は、三者(支援者・高次脳機能障害者・雇用する側)への半構造化インタビューから、就労における高次脳機能障害者の自己開示をめぐる現状を把握し、合理的配慮がどのようにあるべきなのか明らかにする。本研究が着目する高次脳機能障害の特徴は、身体的欠損や不自由はないのだが、誰にでも共通する「疲れやすい」、「忘れ物が多い」といった症状にある。それゆえに、他者がわかりにくく、本人の就労にも困難が生じやすい。
 さらに高次脳機能障害は、障害者雇用率制度との関連や、ジレンマ・戦略を含んだ複雑な障害の開示を必要とする。そこで、高次脳機能障害者の就労に関わる支援者がどのような支援を行い、雇用の側は高次脳機能障害者に必要な合理的配慮をどのように行っているのかインタビュー調査を行った。高次脳機能障害者と会社のインタビューから現状を把握し、高次脳機能障害者の就労にどのような合理的配慮が必要か検討した。協力者は、支援員12名・高次脳機能障害者8名・会社が3社であった。
 結果、高次脳機能障害者の自己開示を支援者が就労先に代弁する際、「高次脳機能障害がよくなっていく可能性を」・「(高次脳機能障害の診断名が)ひとり歩きしないように」説明することが必要だとわかった。厚生労働省障害者雇用対策課から高次脳機能障害者に対する「合理的配慮事例」が公開されていて、各症状に対する配慮の例示はされてあるのだが、高次脳機能障害による困難は本人とその環境によって異なる。雇用の側が合理的配慮を提供する基盤として、「高次脳機能障害がよくなっていく可能性」の理解が必要であることを本調査で示した。