研究概要

代表者氏名伊藤 由希子(いとう ゆきこ)
代表者所属機関東京学芸大学 人文社会科学系
役職・課程准教授
助成年度2015年度

研究テーマ

多世代参加型就労-高齢期就労に向けた組織設計のあり方

研究概要

今後の高齢社会では、財政面のみならず、社会そのものの持続可能性の高さが必要である。高齢期の就労機会の開拓はその中でも欠かせない。現状のように、高齢者がある一定の年代になるとほぼ一斉に退職するという就労形態は見直しが必要である。なぜなら定年制の下では、本人が健康か虚弱かによらず社会保障制度上一律に「支えられ」る。しかし、いわゆる「定年」を過ぎても、自立度が高く労働能力の高い高齢者は多く、又高齢者の健康・就労意識・経済状態は一様ではない。多様なニーズを社会として活かす仕組が必要だ。一方で単に高齢者の意欲を活かすだけでなく、若年世代の期待に応える就業機会や協働のあり方が欠かせない。高齢期就労が人手不足時の一時的な調整弁でなく、持続的に定着する社会を目指す必要がある。このような問題意識から、著者らは若年世代の期待する高齢者就労の調査を行ってきた。この成果を踏まえ本研究では、労働需要が高いこと(人材不足)や属人的経験(知識・人脈・信用)の重要性が高いことなど、高齢者就労の必要性が高い産業・分野を検証する。しかし、実際の労働市場においては、高齢者自身が期待される役割についての準備が十分とはいえず、若年世代の期待もまた十分とはいえない。そこで、実際の多世代参加型の就労の場は大きく「地域」と「企業」に大別されることから、その事例を複数検証した。地域・自治体の取り組みについては特に、高齢者間の互助、高齢者の地域参加を促す取組に焦点を当てた。企業の取り組みについては、特に高齢就労形態の複数プラン化の取組に焦点を当てた。限られた事例からではあるが、多世代参加型就労が無理なく持続する仕組を考察した。