研究概要

代表者氏名大泉 義一(おおいずみ よしいち)
代表者所属機関横浜国立大学 教育学部
役職・課程准教授
助成年度2016年度

研究テーマ

巡回式造形ワークショップの実践を通した子育て支援における「重層的な関係」の構築

研究概要

 本研究は,子供向け造形ワークショップの参画者(子供・保護者・ファシリテータ・クライエント(以下「参画者」と記す))同士の関わりによって生起する「重層的な関係」について,その実践研究を通して検討するものである。具体的には,複数回のワークショップを企画・実践し,そのプロセスの省察的リフレクション,ファシリテーションのエピソード分析,ならびに参加した子供・保護者に対する質問紙調査の感想記述のカテゴリー分析,テキストマイニングを通して,「重層的な関係」の構築原理を次のように明らかにしている。
 第一に,「重層的な関係」の構造を参画者間の関係からモデル化し,さらにそのモデルを成り立たせるファシリテータによる具体的なファシリテーションのバリエーションを整理し,今後の造形ワークショップ実践に活用できる方法論を以下のように提起している。
・「子供-ファシリテータ」関係 … アイスブレイク,説明,エンパワー,フィードバック,提案,失敗の奨励,生活への延長,活動の価値付けなど
・「子供-保護者」関係 … 子供と保護者の結び付け,関わりに対する評価,サポートの要求,生活への延長,活動の価値付けなど
・「保護者-ファシリテータ」関係 … 対話,共感,感謝など
・「クライエント-ファシリテータ」関係 … 情報共有など
 第二に,子供・保護者が造形ワークショップに参加することで得られる「楽しさ・pleasure」が,活動そのものによるだけでなく,「子供-保護者」関係とは異なる参画者同士の出あいや関わりによるものでもあることを明らかにし,そこに造形ワークショップ実践が有する子育て支援としての意味を見出している。