研究概要

代表者氏名牧田 幸文(まきた ゆきふみ)
代表者所属機関福山市立大学都市経営学部
役職・課程准教授
助成年度2016年度

研究テーマ

高齢中国帰国者への生活支援ニーズ調査ー多文化の背景を持つ高齢者への地域での生活支援構築をめざして

研究概要

本研究の目的は、1)高齢期を迎えた中国帰国者が抱える生活上の諸困難を把握し、2)中国帰国者のニーズにあわせた地域での支援の形成、3)今後多文化の背景を持つ高齢者が地域で「その人らしい暮らし」をするための支援構築を目指している。広島市と福山市においてアンケート、インタビューそして参与観察を実施した。広島市では介護予防教室と中国帰国者支援・交流センターで行った。福山市では、調査者が直接自宅を個別訪問した。調査対象者の平均年齢は73.5歳と高く、高齢中国帰国者のほとんどが配偶者ともしくは一人で暮らす。家族とは中国語で話し、半数近くが片言の挨拶程度の日本語理解力である。そのため、近隣住民とは挨拶を交わす程度であり、地域活動への参加に積極的ではなく、交流範囲が狭いことが明らかになった。日本語の理解度は通院やケアの場面で問題になっており、「医者とのコミュニケーションが取れない」、「自由に病院を選べない」、「介護サービスを受けられない」と答えた人たちが7割と多い。中国語のできるケアサービスやヘルパー派遣へのニーズが高い一方で、中国語での支援は十分ではなく、地域によって差異がある。福山市では、日本語教室の先生たちや支援通訳員による医療・介護の情報の周知はされているが、生活や医療費のことを相談したいとの要望も多い。広島市にある中国帰国者支援・交流センターと福山市の支援団体が連携・交流することが、支援体制構築への課題として明らかになった。