研究概要

代表者氏名塩田 藍(しおだ あい)
代表者所属機関慶應義塾大学大学院
役職・課程後期博士課程
助成年度2017年度

研究テーマ

地域在住精神障害者のコミュニティインテグレーションの実態と因果モデルの検討

研究概要

 コミュニティインテグレーション(CI: Community integration)とは,地域生活における適合,サポートの認識,充実感,自立という主観的な要素が融合した概念であり,精神障害者の「地域社会共生感」を表す.欧米では精神障害者の地域生活における目標の一つとして掲げられているが,日本ではCI概念そのものが用いられていない.
 本研究の目的は,地域在住精神障害者におけるCIを定量化し,層別した上で,CIの因果モデルを検証することで,CIの実態を明らかにすることである.
 地域在住精神障害者194名に自記式質問紙調査を行った.
 決定木分析の結果,地域在住精神障害者はソーシャルネットワークのサイズで示される社会的孤立傾向で層別された.多母集団同時分析の結果,因果モデルでは共通するパスや固有のパスが見出された.以上より社会的孤立傾向によりCIの因果モデルは異なることが検証された.社会的孤立傾向の低い群においては,家族や友人によるソーシャルネットワークを基盤とし,インフォーマルケアを活用する支援の有用性が示唆された.社会的孤立傾向の高い群では,精神障害者自身で管理せざるを得ない生活行動をアセスメントし,フォーマルケアを活用する支援の必要性が示唆された.