研究概要

代表者氏名田中 祐児(たなか ゆうじ)
代表者所属機関東京大学大学院教育学研究科
役職・課程修士課程
助成年度2019年度

研究テーマ

近現代日本における貧困報道の特徴の実証的解明:自己責任イメージの形成に着目して

研究概要

 相対的貧困率や生活保護受給世帯率の変遷から示唆されるように,現代日本における貧困は徐々に深刻化しているとされている.また,このような相対的貧困の深刻化と軌を一にして,貧困が人びとの関心を集めるようになっていることについても広く合意が得られるように思われる.貧困が人びとの関心を集めるようになったことそれ自体は,貧困が不可視化されていたかつての状況を想起すると,はるかに望ましいといえるだろう.

 そうした状況にあって重要なのは,人びとがいかなる関心を貧困に向けているのかという問いである.そこで本稿では,人びとが貧困に対していかなる帰責を実践しているのかという問いに対して,貧困に言及した雑誌記事を分析することで応答することを目指した.

 分析の結果,2005年を境にして,人びとの主たる貧困の帰責先は,貧困当事者に帰責を行う「自己責任」から,社会構造や政府に帰責を行う「社会または政府の責任」へと転換したことが明らかになった.