代表者氏名 | 鷹田 佳典(たかた よしのり) |
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代表者所属機関 | 日本赤十字看護大学 さいたま看護学部 |
役職・課程 | 准教授 |
助成年度 | 2020年度 |
日英の高齢定住外国人の「孤立死」−中華圏出身者の社会的孤立とその支援策の検討−
【目的】本研究の目的は、日本と英国で暮らす、高齢中華系住民の社会的孤立にフォーカスし、その実態と支援の可能性について検討することにある。
【方法】本研究では半構造化面接法を用いた質的記述的研究デザインを採用した。日英両国において、高齢中華系住民の支援に携わる組織・団体のスタッフへのインタビュー調査(=支援者調査)と、高齢中華系住民本人へのインタビュー調査(=当事者調査)を行い、主題分析法を用いてデータを分析した。
【結果】全体で16名の参加者から研究協力を得ることができた。英国の調査から、①狭い世界で生きる、②他者になる、③社会的連帯を求める、④支援策の改善を必要とする、という4つのカテゴリーが得られた。日本の調査からは、高齢中華系住民の多くが社会的孤立に直面している可能性とそれらをもたらす諸要因、支援の実態、日本移住後の生活や生き方について重要な知見が得られた。
【考察】英国に暮らす高齢中華系住民が孤独を感じていない背景には、華僑コミュニティの存在があった。しかし、中華系住民以外とのつながりは限定的なものであり、アイデンティティの揺らぎも経験していた。日英とも、言葉の問題や受け入れ時のトラウマ的経験が、社会的つながりの構築を阻む障壁となっていた。いずれの国でも高齢中華系住民を支援する活動はなされているが、財政面などで課題を抱えており、国などによる制度的な支援が今後求められる。