日韓こころの交流プログラム 専門職育成・国際交流セミナー
少子高齢社会の課題に日韓でともに取り組む

日本および韓国の社会福祉関連諸団体の協力のもと、両国で交互(一年毎)に一週間の「専門職育成・国際交流セミナー」を行なっています。
セミナーは、福祉の現場で働く若手専門職と社会福祉を学ぶ大学院生を対象とし、約10名を公募選考し派遣します。高齢・児童・障害などの各分野において先進的な取り組みをしている施設の視察や大学院の授業に参加し、両国の福祉制度・実践の特徴や課題点を考察するとともに、現地の福祉関係者との交流を深めます。
※2020年度は、韓国から日本に参加者を招聘して開催します。


募集要項・参加申込書のダウンロード

※2019年度の募集は終了しました。


セミナー・レポート


若手福祉専門職と大学院生を韓国に派遣し、セミナーを開催(2019年10月14日~20日)

17年目となる"日韓こころの交流"プログラムは、第11回「専門職育成・国際交流セミナー」を韓国にて実施しました。今回は日本から福祉専門職や社会福祉専攻の大学院生4名が参加し、ソウル市および全羅南道木浦(モッポ)市にて、先進的な取り組みを行う福祉機関を訪問し、現場の実践を学びました。


初日には、「ソウル50プラス財団」を視察しました。韓国で大多数が定年を迎える50~64歳を対象にサービスを提供しています。経験や技術力のある当該年代の人々と、社会的企業とをマッチングをすることで、人材の活用と同時に社会問題の解決を目指す、新しい取り組みがおこなわれていました。

女性や障害者、低所得者の就労支援を行う「麻浦(マポ)区雇用福祉支援センター」では、運営するカフェやベーカリー、リサイクルショップ等を見学しました。カフェでは福祉作業所の商品を販売するだけでなく、育児相談スペースが併設されて見守り機能も果たしていました。その他、アウトリーチ型支援など、地域に密着した実践を学びました。

 

セミナー3日目は、ソウル近郊にある「驪州(ヨジュ)希望刑務所」を訪問しました。ここは2010年に開所された韓国唯一の民営の刑務所で、受刑者の再犯率の低さが特徴の一つになっています。大手企業と連携した技術習得および就職斡旋のプログラム、受刑者が家族とのつながりを維持できるような行事、また退所後のケアの実施など、独自のプログラムが多くあり、様々な工夫が凝らされていることを知りました。

この日の午後には、驪州希望刑務所で受刑者とその家族の面会をサポートしている「児童福祉実践会セウム」を視察しました。
受刑者家族への支援(子女の学費や刑務所への面会旅費の支援、メンタル面のサポート等)だけでなく、政府へのアドボカシーや一般の人々への啓蒙活動など、社会への働きかけも積極的におこなっており、支援制度が未整備の分野でのソーシャルワーク実践を目の当たりにしました。

その他、障害者の生活施設や職業訓練施設、子どもから高齢者まで全地域住民のためのサービスを提供する福祉館、韓国社会福祉協議会等を視察しました。

 

セミナー5日目は、木浦市に移動し、1928年に設立された児童福祉施設「木浦共生園」を訪問しました。韓国人と日本人の夫妻により設立された同施設が、植民地や戦争の時代の困難を越えて約四千人の児童を社会に送りだしてきた歴史を学びました。

午後の交流会(シンポジウム)では、約100名の福祉関係者が集う中、金聖二(キム・ソンイ)韓国保健福祉家族部元長官による基調講演(「児童の権利と教育」)と、今回のセミナー参加者による報告をおこないました。前回のセミナー参加者も韓国各地から集い、温かな交流の時間となりました。

交流会で発表する参加者

参加者はそれぞれ異なる専門分野を背景にしていましたが、互いの知識を持ち寄って、話し合いながら毎日の研修に臨んでいました。
より良い社会を築こうと実践を重ねる現地のソーシャルワーカーと出会った参加者からは、「日本も韓国も、それぞれに抱えている課題があり、その解決に向けてどの施設も悩みながら取り組んでいる姿勢に刺激を受けました」「韓国の実践を見て、自分のソーシャルワークの原点について、深く考え直すきっかけになりました」などの声が聞かれました。


第16回シンポジウム『公・民協働で取り組む地域共生社会の実現―先進的実践と課題』を開催

現在、人と人のつながりが希薄化し、孤立する人が増えていることが社会問題となっています。一人の社会的孤立も見捨てない「地域共生社会」の実現について考えるシンポジウムを開催しました。
2018年11月30日、会場となった龍谷大学 響都ホール 校友会館には、社会福祉従事者や研究者、ボランティア等、約120名が来場されました。

基調講演
社会福祉協議会を長年にわたり牽引してこられた社会福祉法人中央共同募金会常務理事・渋谷篤男氏が講演されました。
渋谷氏は、人間関係・社会関係が希薄になっていることが原因で、深刻な問題を持つに至っている人が多く、あらためて地域社会の力が求められていると指摘されました。

事例発表
日韓両国から4人の専門家をお招きし、それぞれの地域での実践をご紹介いただきました。
日本からは、子どもたちに安価に食事を提供する「子ども食堂」の先駆者として知られる、NPO 法人豊島子ども WAKUWAKU ネットワーク理事長の栗林知絵子氏と、全国で第一号のコミュニティソーシャルワーカーであり、2014年放映のNHKドラマ「サイレントプア」のモデルとなり同ドラマの監修もされた、豊中市社会福祉協議会 福祉推進室長・勝部麗子氏のお2人が登壇されました。

 

韓国からは、ソウル市蘆原区庁 児童青少年課 児童親和政策チーム長のキム・ジョンハン氏をお招きし、児童青少年のための官学民の協力実践について講演いただきました。また京畿道安山市の本五総合社会福祉館でケース管理センター部長を務めるムン・ミジョン氏からは、2014年におきたセウォル号沈没事故に際し、地域の共同体の危機を克服した実践等をお話しいただきました。

パネルディスカッション
事例発表後は、関西学院大学名誉教授・牧里毎治氏をコーディネーターに迎え、パネルディスカッションが行われました。
牧里氏は、地域共生社会とは、地域まるごと家族になることではないかと提起され、どんな人でも優しい心を持っているということを信じ、それを覆っているベールを少しずつでもはがしていくことが、福祉に携わる者の仕事ではないかと、シンポジウムをまとめられました。


韓国から若手の福祉専門職や大学院生を招聘し、セミナーを開催(2018年11月25日~12月2日)

シンポジウムと併せて、第10回「専門職育成・国際交流セミナー」を実施しました。今回は韓国から、10名の福祉専門職員や社会福祉専攻の大学院生が参加し、関西圏の高齢、障害、児童等の諸分野で先進的な取り組みを行う施設を視察し、現場の実践を学びました。また同志社大学等の教授陣による講義を通し、学術的な面からも日本の社会福祉について理解を深めました。

 
日雇い労働者の求人票について説明を伺う(大阪)

 
高齢者施設の居住スペースを見学(京都)

 
保育園やグループホーム等、児童・母子関係の施設を訪問(兵庫)

 
セミナーを振り返る総括の時間

参加者はこの研修で初めて集まったメンバーでしたが、それぞれの専門分野の知識を持ち寄って、互いに助け合いながら毎日の研修に臨んでいました。
今回のセミナーを通して参加者からは、「利用者中心の福祉実践を肌で感じることができ、今後の実践に役立てていきたい」との声が聞かれました。
また、自分の出身大学にあった韓国の小説家の石碑が同志社大学にもあるのを見て、日韓の深いつながりを感じ、胸が熱くなったと話す参加者もいました。
これからも本セミナーを通して、日本と韓国の福祉の発展と、両国の“こころの交流”に貢献できることを願います。